すれ違う高校生と小さな変化
コロナ渦に突入して程ない頃(つまり現在が2022年冬である事を鑑みて2年程前のことであろうか)通勤する際によくすれ違う地元高校生のカップルがいた。
いつも手を繋いで歩いている2人だった。
2人が寄り添い歩いていた事は、決して寒い季節柄によるものではなかった事と思う。
男の子は身長が彼女よりも低かったが、いつも胸を張って歩いており、車道側に彼女を立たせず、マスクの上からでもわかる位の笑顔で彼女に話しかける、優しさと男らしさを持ち合わせた良い男だった。
出勤時、ほんの一瞬すれ違うだけの彼らだが、朗らかな気持ちにさせてくれる彼らを、私は親戚の子供を見守るような感覚で見ていた。
男の子のつけているネックレスが思いのほかチャラいと感じたのは、それを隠していたマフラーも外し、首元を大きく開け始めた5月も終わる頃の事。
この頃は殆ど毎日見かけていたように記憶しているが、男の子はいつも笑顔で胸を張っており、女の子もいつも穏やかかつ誇らしげに男の子の話を聞いているような様子だった。
喧嘩なんかしても朝には仲直りするルールでもあるのだろうか?
ただ少しだけ起きている変化に私は気づき始めていた。
時は流れ、夏も本番。
昔の夏ってこんなに暑かったけ?なんて話題がほぼ毎年繰り返されているが、去年もその限りであった。
額から流れ落ちる汗を拭いながら、駅に向かう人の群れをかき分け職場へ向かう。
朝から蝉の鳴き声が響き渡る。
彼らはいつもと変わらずに歩いていた。
少しだけ起きていた変化は、この頃明確な変化となっていた。
男の子の身長が女の子よりも明らかに高くなっていたのである。
彼は変わらず胸を張って優しい笑顔で彼女に話しかけており、彼女も変わらずに穏やかでどこか誇らしげである。
きっと関係性が変わった訳ではないだろうし、身長云々で今更変わることもないのかも知れない。
それでも、私は何故だかとても嬉しかった。
繰り返し発出される緊急事態宣言の影響などもあり、車通勤が増え、彼らを見かけるタイミングが無くなった。
時間が経って後に見かける時が来るのだが、その時にある事実が発覚する。
その話は、また別の機会に。