ダイエットトレンド〜その1 ダイエットの歴史
そろそろ
必ず痩せる簡単なダイエット
なんてものが確立されてもいいんじゃないか?
と考えている人は数多くいるのではなかろうか?
結論から言えば
そんなものはない
厳密に言えば、誰にでも出来るものはない。
しかしながら、世の中には
「簡単に痩せる〇〇ダイエット!」
「ズボラな私にでも出来る〇〇運動ダイエット!」
「もう我慢しない!いつもの食事に〇〇するだけダイエット!」
等という何処かで聞いたことのありそうなワードが溢れかえっている。
そもそも、ダイエットの語源は、古代ギリシャ語のディーエター【生活習慣・生き方】と言われていて、そこから中世ラテン語のディエタ【食事量・仕事】などの意味に転じ、英語のdiet「日常の食物、治療、体重調節のための規定食・食事療法をする」へと変容していった。
つまりは本来ダイエットとは、痩せるという意味合いだけではなく、健康維持の為に太る事も含む食事療法全般を指す言葉であった。
しかし、第一次世界大戦時、倹約は美徳との意識が世界中に広まり、主に大食文化が蔓延っていたアメリカでダイエット=痩せると言う考え方が流行し、1878年初のダイエット本「肥満に関する大衆への書簡」(イギリスのウイリアム・ベンテイング著)が刊行。6万部以上売れた。
その後、世界は様々なトレンドに左右されつつも、1950年マリリンモンローが時代の象徴となり、痩せている事よりも女性らしいフォルムを維持する事が美しいと考えられるようになった。
・新しい価値観
しかし、日本では痩身願望に火をつける決定的な事件が起きる。
それが
ツイッギーの来日
である
本名レズリー・ホーンビー。身長165㎝体重41㎏という華奢な体躯からツイッギー(小枝)の愛称を得て、世界的人気を獲得したイギリスのモデルである。
細い足にミニスカートが可愛いと女性の憧れとなり、当時の日本では痩身ミニスカート姿を競いあう「ツイッギーコンテスト」なるものが各地で開催される事となり
痩身=美しい
と言う価値観が波及した。ツイッギー来日以前と以降では、日本人の美意識に大きな変化が起きたと言われている。
そもそもの体躯が欧米諸国と比較して小さい日本人にとっては、マリリンモンローよりもツイッギーの体型を目指す方が現実的だったのかもしれない。
・過激なダイエット
とにかく細くなりたいと考え始めた日本人であったが、当時は社会全体が知識に乏しく、水太りと言う言葉に代表される迷信めいたワードが乱立し、とにかく食べず、場合によっては水分すらも摂取せずに長時間有酸素運動を行うなどの無茶なダイエットが横行した。
そんな中、1970年に国民的歌手・弘田三枝子さんが『ミコのカロリーBOOK』を出版。当時はまだダイエット本もなく、大ベストセラーになり、ここから「カロリー」という言葉が一般人にも身近なものとなった。更に、1973年にはアメリカで、体重の指標であるBMI値が制定され健康的体重が数値化された事で、ダイエットも化学的且つ健康的志向へと向かっていくものと思われたが、ダイエットはさらに過激な方向へと向かう事となる。
BMI値が基準として設けられたことにより、憧れの対象となるモデル等と自身の現実的な差がはっきりと数値化され、より痩せなくてはならないと言う意識に拍車をかけた。更には通常のBMI値の中での正常とされる数値の設定とは別に【美容体重】と言う女性芸能人を基準とした数値が明確化され、果てには
健康的=デブ
と言う印象すらも根付き始め、強力な痩せ薬(強力な下剤)や脂肪吸引などの美容整形が流行し、更には摂食障害・過食症・拒食症が社会問題となる。そして年々BMIは右肩下がりになり、1970年代には22.3だったBMI値が2000年には21.4まで減少した。
現在の日本の女性芸能人のBMI平均値は17から18程度と言われており、現代においても日本では【痩身=美しい】と言う価値観は変化しないトレンドの一つであると言うことが見て取れる。
[BMI基準値]
- 痩せ型 〜18.4
- 普通 18.5〜24
- 肥満 25〜
1960年代から1970年代にかけては、アメリカからの輸入健康器具等が流行する。
この頃は器具が中心で、食事は基本【食べない】と言うなかなかに攻めた時代。
甲状腺ホルモンが含まれた過激な痩せ薬が流行するが、死者まで出す顛末となり、日本国内では発売を禁じられた。(2002年にはニトロソフェンフルラミンと甲状腺ホルモンが含有されている中国製のサプリメントが大きな社会問題となる)
とにかく痩せたいが何を信じていいかわからないと言う混沌とした時代。
1980年代になると、バブルの影響もあり、高級フィットネスクラブやエステがブームに。杜仲茶・紅茶きのこ・ハト麦茶などの当時としては聞き覚えのないお茶などが何の根拠もなく流行する。金持ちが何かしらの情報を頼りに手に入れたものがきっと良いものであろうと盲目的に信じる時代が来る。この頃には、何の見識もない有名人が謎のダイエット法を提唱し始める。これはひとえに、ダイエット本が売れると言うブームに乗っかったものでしかなかった。
1981年にケネス・H・クーパーが提唱したエアロビクスが大流行。ここから長きに渡り有酸素運動がダイエットにいいと言われ続ける所以がここにある。
1990年代、バブルが弾けた後は打って変わり、なるべく金をかけないダイエットに皆走り始める。スリッパの踵が削られたダイエットスリッパや寒天が流行り始める。
また、りんごダイエットや、茹で卵ダイエット、こんにゃくダイエット等の、単品をひたすら食べ続けるダイエットや、全身にラップを巻いて生活すると言う奇抜なダイエット方法も流行する。
1996年厚生省(言厚労省)が日々の生活習慣(食習慣・運動習慣・休養・喫煙・運種)が発症・進行に関与する疾病群を生活習慣病と定義つけました。これにより国民の健康志向が高まる。そして2002年健康増進法が制定され、2008年4月より40歳以上の被保険者・被扶養者に対し、メタボリックシンドロームに着目した性格習慣病予防のための検診・保健指導が実施された事などにより、健康的ダイエット志向が流行し始める。
ビリーズブートキャンプやカービーダンスなどの運動系ダイエットが流行。インターネットの普及に伴い、情報を得やすくなった事から、ダイエットに科学的根拠が求められる様が顕著になる。
2010年代に入ると、気合と根拠のハイブリッドであるライザップに代表されるパーソナジムが流行するなどして、現代へとつながる。
サラリとダイエットの歴史をおさらいしたが、表面をさらうだけでも正直大変だと思うくらいダイエットには激動の歴史がある。
何故こんなにも歴史が移り変わっていったのか、その所以を次回は考察していきたいと思うのでお楽しみに。