喫煙の異常性
ダイエット,  日常

やめて良かった。日常編その1 タバコ後編

前回のブログ(やめて良かった。日常編その1 タバコ)の続きである。

私は、現在38歳(2022年3月25日現在)なのだが、タバコを辞めたのは2年程前である。喫煙歴はあまり細かくは言えないが20年程あり、一日2箱吸うヘビースモーカーであった。

辞めようと思った事に何か大きなきっかけがあった訳でもない。ただ、漠然とやめたいとは思っていたものの、辞めることに伴うストレスから逃げる為に様々な言い訳をしている自分にほとほと嫌気がさしたのである。

繰り返してきた言い訳

とある調査会社のアンケートによると、3900人に喫煙習慣のアンケートをとった所【喫煙している】と答えたのは20.7%【吸っていない】は51.1%【喫煙者であったが今はやめた】が28.2%となり非喫煙者が80%近くを占める結果になった。そして喫煙者に禁煙の予定があるか聞くと、【禁煙の予定はない】と答えたのが53.7%【時期は決まっていないが禁煙する予定】が40.7%【禁煙する予定で時期も決まっている】と答えたのが5.6%であった。

喫煙者の約5割は【タバコなんてやめた方がいい】と理解してるにも関わらずその気になればいつか辞められると信じていて辞めない。そしてこの【禁煙の予定がない】と答えた人間の中にも、一度禁煙に挑戦したが、タバコが吸えないストレスに耐えかねて挫折し、その後も禁煙を諦めるといった道筋を辿った人間は多くいるはずだ。現に私がそうであった。

禁煙をする為に、周りの人間に禁煙宣言をし、耐えかねて吸ってしまい

「あれ?禁煙しているんじゃなかったの?」

なんて言われて恥ずかしい思いをしたもんだから、もう禁煙するなんてそもそも言わない方が良いんじゃないか?という見地に至り、自分はタバコを吸い続けるという謎の意志を固め

タバコは自分にとってリラックス出来るいい材料である

喫煙者同士のコミュニティーがあり、コミュニケーションツールになっている

という二本柱で自分の喫煙習慣を正当化してきた。

あっけなく論破されてしまう脆弱な柱ではあるが、麻薬中毒者に正面から向かい合って更生へ導いてくれる一般人なんてあまりいない。

禁煙外来

私は、28キロのダイエットを成功させる上で最も大きかった要因は

プロの力を頼った

という点であると思う。

勿論、プロの力を頼らずとも痩せられる根性のある人はいると思うのだが、私にはそんな根性はなかった。タバコに関しても同様で、禁煙を試みたことがあったが尽く失敗に終わっている。

「私は、根性がない」ということを知る事ができたのは何とも尊い経験であった。

なので、タバコに関してもプロの力を頼ると決めるにあたっても何の抵抗もなかった。

そして禁煙外来を検索すると、地元のクリニックにいくつか行っているところがあり、すぐに申し込んだ。

当日、受付にて【チャンピックス】という薬を用いた治療を行う旨の説明があり、タブレットを渡され待合室へ通される。そしてそのタブレットで【チャンピックス】の説明動画を見るように促され、見終わったら受付へと指示される。

動画内ではチャンピックスの薬理・効能が解説される。簡単に言えば、少量のドーパミンを放出させ喫煙欲求を和らげ、また、ニコチンと結合することで快感を覚える受容体と先に結合してしまう事で、タバコを吸ってもスッキリしない感じにするとの事。

実際に使用した筆者の感想を喫煙者目線で話をすると

ヤニ切れ起こして吸ってもヤニクラしないどころか1ミリのタバコよりも吸ってる気がしない

といった感じだ。

そしてタブレットでの説明を終えると、問診票に禁煙したい理由や喫煙歴等を記入し、呼気検査を行う。

吸入器のようなものに息を吐き(結構長い事息を吐き続ける)しばらくすると何やら数字が出てくるのだが、これで喫煙の有無がわかってしまうらしい。直近の喫煙だけでなく、体内に残っているニコチンの残量がわかる(みたいな説明であったと思うがうろ覚え)との事なので、喫煙はもれなくバレる。この呼気検査は今後の通院時毎回行う事になるとあらかじめ説明されるので、つまり吸ったらバレるからねと念を押される。

呼気検査が終わると、禁煙誓約書なる書類を書かされる。これに何の意味があるのかあまりわからないが、とにかく意志表示することが大事なのであろう。そして【禁煙開始日】という項目の所に、1週間後の日付を入れる。なぜだ?と思ったが、その理由は後々わかる事となる。

そして医師との問診なのだが、とにかく禁煙をしようと決断したのは素晴らしい判断であったと褒められる。ひたすら褒められる時間が続く。次回からの問診時は、これに喫煙者の悪口が加わる感じだ。

初回はひたすら褒められ、そしてもう一度薬の説明を聞く。そしてこの時に、禁煙は1週間後から開始するように指示を受ける。それまでは今まで通り吸っていいようだ。

寧ろこの1週間はタバコを何度かは吸った方がいいとすら言われる。

タバコを吸っても何も解決しないと言う負の経験をする事で依存から脱却できると言うのだ。

そして処方箋のチャンピックスをもらい通院終了。

通院スケジュールに関しては

【初回】→2週間後【2回目】→2週間後【3回目】→4週間後【4回目】→4週間後【5回目】 終了

といった感じである。

初回が薬込みで約5,000円。次からは3,000円〜4,000位で合計2万円位である。

保険適用期間は3ヶ月なので大体このスケジュール通りに進まないといけない感じにはなる。

禁煙開始

禁煙に成功した多くの人は

「簡単に辞められたよ。」

と言ってくる。禁煙外来に通った人も同様のことを口にし、更には

「チャンピックス使うと何の苦労もなく辞められるから。」

とまで言ってくるが、これはあまり聞かない方がいい。

というのも、禁煙外来に最後まで通って、禁煙に成功する人は全体の4割程度と言われている。半分以下だ。

薬を使ってもそれなりにキツイことはキツイのだ。

しかし禁煙成功者は自身の体験をベースに禁煙楽勝話をしてマウントをとってくる。これはダイエットの際にもよく起こることなので、又別の機会にお話する事とするが、とにかく医者の言うこと以外はあまり聞かなくていい。

早速チャンピックスを飲み始めたが、案外そんなに喫煙欲求が低下する訳でもない。やはり吸いたい気持ちは割と続く。

吸っては良いと言われたものの、せっかく禁煙外来まで行ってタバコをやめられなかったら馬鹿みたいだと思い、一足先に禁煙してしまおうと言う気持ちになり、タバコを手元に置かないようにして、灰皿などの喫煙具も全て処分していたが、結局吸いたい衝動は抑えられず深夜にコンビニまで行きタバコとライターを購入しコンビニの前の灰皿で喫煙した。(もうこのコンビニの前には灰皿は設置されていない)

結果は先述した通りだが、本当に何にも解決しないのだ。吸っていい気持ちにもならないしイライラはおさまらない。それなのに臭いだけは妙にまとわりつき不快感を覚える。

思いっきり吸い込んでみたりしたが何も感じないので、もっと重いタバコならどうかとピースを購入するが更に臭いだけで何も感じない。夜中にコンビニまで言って馬鹿みたいだと思ったが、本来それが正常な反応である。

初日はとにかく眠りについた。

翌朝の起き抜けのタバコも同様であった。

禁煙開始までの1週間はチャンピックスを1日1錠何処かしらのタイミングで飲む。

1週間経ち禁煙開始日となった所で2錠に増薬する。

最初の1週間は吸って良いと言われたものの、私はすでにタバコの無能感に辟易としていた。本当に臭いだけで何も解決してくれないのに、吸いたい(と言うか、あのタバコが足りない時に吸って全身の血管を駆け巡る多幸感を味わいたい)と言う感覚だけは無くならない。

禁煙開始となり増薬した所で感覚としてはあまり状況は変わらず、とにかく喫煙したい気持ちは絶えずやってくる。

しかし、ある瞬間ふと吸ってしまおうかとタバコを取り出した瞬間に気づいたことがある。禁煙外来に通ってから10日ほど経ったある日のこと。

タバコの箱を開けると、中には15本程タバコが入っていた。しかしこのタバコ、初日の夜に喫煙衝動に耐えきれずに買いに行ったピースである。

1日2箱吸っていた男が、10日で5本しか吸っていないのである。そして吸いたくなるのは決まって夜自宅にいる時で、日中仕事がある際には吸いたいと感じることも殆どなく過ごせていたのである。

開けたタバコの箱をそっと閉じ、そこから先、再びタバコを吸うことはなかった。

2週間が経って2回目の通院。呼気検査の数値もある程度は下がっているとの説明を受けるが、やっぱり少し吸ったことはバレていたみたいだ。吸っていいと言われているので何か言われることもなかったが。

ここからは、嘘のようにタバコを吸いたいと思うことも減り、現在に至る。

チャンピックスの副作用として、不眠・吐き気・便秘・胃炎などがあるが、こういった副作用に関しては相性によりどんな薬でも起きうる事ではあるので、医師に相談した上で使用すれば問題ないであろう。

因みに私は、大きな虫に追いかけられるというタバコは一切関係ない悪夢を2周目位に続けて見た。薬の副作用なのか・タバコを吸えないストレスからなのか、いまいちはっきりとはしないが、とても怖い日々ではあったがすぐに落ち着いた。

とにかく紆余曲折あったが、1ヶ月程度で私はタバコを吸いたいと思わなくなった。

やめて良かった

健康面に関しては、やめてすぐに感じる事はなかったのだが、タバコをやめて半年程経ったある時、ランニングをしてみたら息が上がらず

「走るのが楽しい!」

と心から思えた瞬間が来た。

健康面というのはあまり表立って見えない部分であるし感覚的な話なので何とも言えないと思っていたのだが、こればっかりは明らかな変化であり「健康っていうのはこういうことか!」と感心した覚えがある。

朝起きやすくなるという話もあるが、私はそもそも朝に強い男なのでこの変化は全く感じなかった。

タバコをやめたからと言ってお金が貯まる実感はない。これに関しては他にも私がクリアしなければいけない部分があるのだろうと思うが、美味しい食事や洋服など他の事に使っているのであればとりあえずはタバコよりはいいかと思える。

食事に関しては

「水道水とコンビニのおにぎりがカルキと防腐剤の臭いがしてとても食べられなくなった」

と言っている人がいたが、そもそも感じることが出来なかった感覚を取り戻し、危機回避ができているのであればそれは大きな収穫であろう。私の場合は禁煙以前に食事制限をした事により味覚の変化を感じた為、タバコをやめてからの変化なのかいまいちわからなかったが、あんなにドギツイ臭いの煙を吸ったり吐いたりして何も感じなくなっている人間の感覚はやはり信頼に値しないとする事が一般的な理屈ではあると思う。

と、色々あるものの、兎にも角にもやめて最も良かった事は何はさておき

タバコに行動を支配されなくなった

という事であろう。

これを聞いて

「いや、私はそこまでの依存症じゃないし。」

という方もいる事であろうが、多くの人はタバコによって生活様式に多少なりとも影響を与えていることは確かである。

先ほどの私の例であるが、タバコを吸いたくなって深夜にタバコを買いにコンビニへ行く。という行動も異常である。そんなことしないという人も、タバコを買いだめしていたり、家に帰る前には買っておいたりと、タバコがなくなることの恐怖と葛藤している時点でそれは十分異常行動なのである。

一度タバコを経験してしまった人間は誰もが持ち合わせている当然の権利を自ら手放し、自身によって重労働を課しているのだ。

もはやそれはタバコの奴隷である。

喫煙所を探す行為も非常に無駄の多い行為の一つであるし、タバコを吸わない人間からしたら謎の待ち時間の完成である。人を待たせてでもタバコを吸いに行きたいという、本来であれば損なわない人間性を簡単に損なわせる事象から見ても、大変危険な薬物であるといえる。

何にせよタバコに支配されない生活は楽である。

今吸っている人でやめようと思わない人に何もいう気はないが、これからタバコを吸ってみようと思う人には私は全力でやめておけと言ってやりたい。

タバコが法律で禁止されていない以上比べる事は間違っているかもしれないが、覚醒剤使用で捕まった人たちは、刑務所内で皆口々にこう言う

「辞める理由なんて特にないし辞めない。」

喫煙者も同じことを言う。

倫理感で論じるか、法律で論じるかの違いでしかないと思う。

とにかく吸っていない人はそれだけで一つ才能を持っていると思っていい。その才能を失わずにいてほしい。

本当にタバコをやめて良かった。